恋ヲ失フ
失恋した
付き合って1年5ヵ月
のめり込んだ恋だった
いつもそばにいれた
同じ場所で
同じ空間で
同じ話題があって
同じように呼吸をしていた
そばにいるのが当たり前になって
いないのが不思議なくらいで
だんだん一緒にいるうちに癖とかしぐさとか、
そういうことまでうつってきて
兄弟化すらしてた
同じ空間にいれなくなるのが、こんなにも心をすれ違わせるのだと
身をもって経験した
いいか悪いかはわからないけど、彼さえいれば、って思うこともよくあった
何にも見えなくなる恋って、あるんだね
本の中だけだろうと思ってたのにな
まだ好きなんだと思う
思い出すだけで胸が痛い
勝手に涙すら出てくる
きっとしばらくは夜な夜な彼を想って泣くだろうと思う
だって本当に好きだったから
依存しきってた
その存在が、そばにいて当たり前なのだと、何一つ疑ってなかった
彼の存在が絶対だった
離れ離れになって、もしかしたらダメになるかも、なんて思う反面、
やっぱり彼から離れられないと思う自分がいた
少しずつ少しずつ、離れ離れになって、わがままが増えていった
今までは会って顔を見て話せてたことが、メールや電話越しにしか伝えられなくなった
僕らは、コミュニケーションがうまくとれなくなっていった
僕は自分の先の見えない状況に不安定になり、彼もまた、自分のことで相手のことを思いやれなくなっていった
つりあっていた天秤はいつしか彼の方に急激に傾きだし、限界がきた
泣かせてばかりだと
約束すら守れなくなるのだと
彼はそれが負担になり、自己嫌悪に陥るようになった
会って別れるたびに泣き、仕事でデートが中止になったと聞いては落ち込んでいた僕が負担になるのは目に見えていた
先月からぎくしゃくしだした関係に、少し距離をおくことも考えたが、結局頑張るから、と言ってここまでやってきた
限界は、既に見えていたのかもしれない
受けとめきれない、と彼は言った
よくよく考えれば、完全に依存しきった関係で、彼がそう思うのも無理はなかったと思う
いつの間にか何もかもを委ねきっていた僕がそれに気付いたのは、情けない話だが先月のことだった
今までは、それが普通だった
彼はもう既に苦痛を感じていたのかもしれないけれど、それでもまだ僕を支えてくれる余力があったのだろうと思う
学校へ行き、同じ場所で授業を受け、昼ご飯を食べ、少し別れて卒研をし、また一緒に帰り、うちに寄って、
ビデオを見たりひとつのふとんで眠ったりしながら、僕らはコミュニケーションをとりあってきた
一緒にいて心から安らぐ、という感情を、教えてくれたのは紛れもない彼なのだと思う
僕は幸せだった
彼はどうだったのかわからないけれど、それでも僕らは一緒にいて笑いあえていた
心から信頼しあっていた
何一つ疑う余地なんてなかった
結果的に彼に限界がきて、別れることになったけれど
彼は最後のメールでこう記していた
恨んで憎んで忘れてほしい
と
自分勝手なのだと、彼は言った
俺が悪いのだと
だから責めてほしいと
でも、僕にはそんなことはできない
最後は自分勝手であったにせよ、今の自分をつくるうえで彼は多大なる恩恵を与えてくれた
僕が変わっていく姿を、誰よりも近い場所で見つめ、そして応援してくれた
そんな彼を、誰が恨むことができるのだろう
感謝こそするが、彼に対して恨み言など何一つだってあるわけがない
そりゃあ、受験がおわるまでは嘘でも支えててほしいと言った僕の願いを、彼は先月嘘じゃなく支えるよ、と答えたけれど
結果的にそれは嘘になってしまったけれど、答えてくれたときは彼の本心だったのだろうと思う
いつだってやさしかった
僕を励まし、支え、導いてくれたのは紛れもなく彼によるものが大きいと思う
昨日は思い出しては泣いていたけれど、今日僕は彼にあてて短いメールをだした
せめて友達でいさせてほしい
と
別れようと言われた瞬間は、何もかもをすぐに忘れてしまいたかったけれど
でもそんなことは無理なんだと思う
だからせめて、一時期はお互いのことを誰よりも理解しあおうとしてた相手だから
だから、お互いのことを少しよく知った友達でいさせてほしいと、僕は彼に告げた
今すぐは無理だと思う
でもきっと、それは時間が解決してくれる
僕は神様が与えてくれたこの出会いを、なかったことにはしたくない
そう、言った
そしたら、彼は『わかった』って言ってくれた
やっぱり、最後の最後のわがままは、僕の方になってしまったみたい
たくさん苦しめてごめん
それでも大好きだったから
お互いがもっと年を重ねて、いずれまた会うことがあったなら、きっと笑いあえるはず
そう信じていたい
勉強をしてても、ふ、と彼のことが頭に浮かんで
笑った顔や、眠った顔や、こちらを見つめる顔や、眠そうにしてる顔や、しぐさや、感触がよみがえってくる
泣きたくなって、思わずシャーペンを投げ出す
たぶん僕は、心の中のどこかで、彼に逃げ場所を求めていたのだろうと思う
勉強ができずに苦痛で泣きたくなったり嫌になったりしたら、必ず彼のもとへ逃げ込んでいた
突き放されてやさしくしてほしい、なんて言ったのも先週の話で
でも、彼は突き放してくれた
たぶん、一緒にいたらどんどんダメになっていったであろう僕を、彼はそのやさしさゆえに突き放してくれた
逃げてばかりじゃダメだと言うことを、彼は自分が傷付いてまで教えてくれた
悲しくないわけがない
今までそばにあった力強い手がない状態で、これからどうすれば、と途方に暮れることだってきっと何度もあると思う
でもおんぶにだっこの状態で、それが果たして僕のためになるのか?
…なるはずがない
とにかく、今突き放してくれた彼のやさしさを無にしないためにも
僕は受験勉強に必死になろうと思う
そうしていつか、『合格決まったよ!』っていう知らせとともに、彼にメールができる日がくるのを待っていたい
未練がないわけじゃない
今だって彼のやさしさに甘えたがってる自分がいる
でも、それじゃダメなんだ
ここを見てるはずもないけれど
今までありがとう
僕を支えてくれて
僕を励ましてくれて
僕を導いてくれて
僕を抱きしめてくれて
抱きしめあったりキスしたり、それ以上のスキンシップで心を満たしてくれることを僕に教えてくれたのは、紛れもないあなただよ
本当に好きだった
大好きだった
いつか、また
新たな関係を、ふたりで築いていけるといいね
さよなら、大好きな人
20050501