耳元に、濡れた声
それだけで、彼は簡単に俺の体の自由を奪うのだ

 

ヴォイス
1st edition

 

ソファに沈み込んだ薫くんの体に跨る。
端から見たらひどく奇妙で滑稽な体勢。
やのに、俺は抗うしぐさ1つ見せずに薫くんの言われるがまま、で。

金色の髪に、縁なしの眼鏡。
お気に入りの革張りのソファに足を組んで、肘置きに片肘をついて。

「おいで」

たった一言で。
いとも簡単に俺をその気にさせて、服従させる。

その声は、さながら麻薬にも似て。
頭が痺れたような感覚に襲われ、思考する力は止まり。
ただ与えられる快感を欲して、その手を、その声を、その存在を求めることしか考えられんくなる。

極上の酒でも溺れたことのない快楽。
性質の悪いクスリも似た、その声。
何度飲んでも飽き足りずに手を伸ばしてしまう―――依存性の、強い。



「ダイ―――

濡れた、ヴォイス。
耳元に落とされた瞬間、ぞくりと身体が震える。
繰り返すように快楽を覚え込まされた身体を満足させられるのは、きっと薫くんだけ、で。

震える手を伸ばして薫くんの眼鏡を取ると、そのまま目を閉じて口付けた。
顎に手がかけられ、固定されて。
やわらかい感触に唇をなぞられて、促されるがままに口を開く。

―――んっ、ふ……」

迎え入れた薫くんの舌。
その性格ならではか、薫くんのキスはいつもひどく丁寧で。
そして、ひどく上手い。
勢いだけで飲み込もうとするんじゃない、技巧に長けた口付けは、簡単に俺の身体を溶かして。
焦れったくなってがっつくのはいつも俺の方。

「ちゃんとやるから。がっつくな、ダイ。…それとも、待てへんの?」

口付けを解いて。
鼻先が触れ合うような距離で囁かれる、そんな意地の悪い言葉にすら煽られている俺はきっとこの人に染められすぎてるんやろう。



薫くんとこうなるまでは知らんかった。
キスだけで腰が砕け落ちるような快感を。
身体の至る所にある性感帯を。
声だけで、簡単に堕とされてしまうことすら―――



「ぃや、やって、薫…!」

服をはだけさせられ、肌に口付けられて。
男の頭を抱え込んで、足を開いて痴態を晒す、そんな羞恥にすら煽られる。

「嘘吐き」

ぴちゃ、と音をたてて、嬲られる胸の突起。
瞬間歯を立てられて。
身体がびくりと震える。

意志とは裏腹に素直に反応を示す身体を、止めることは最早不可能で。



いつも思う。
この身体が誰に対して開かれているんか。
この身体が誰に対して絶対的に服従しているんか。

それは、薫くんしかおらへん、と―――



「ダイ」

どさりと音をたてて、身体を入れ替えられて。
ソファに組み敷かれる。

鋭い瞳が、今は自分だけを射抜いて。
喰らおうとしている。…獲物を狙う、猛獣のように。

このぞくぞくするような視線が好き。

声で、瞳で、指で。
薫くんは、簡単に俺の自由を奪う。

「ダイ、好きやで」

その声での告白は、俺からすれば反則技に近い。

「好きやで」
―――ッン……」

ほら、こんなに簡単に。俺は、薫くんの思うがまま。

目を閉じて、降ってくる口付けを受け止める。
首元に回した手。
少しも抗う気がないという意思表示。



快感に従順なんやない。
薫くんに従順なだけ。

口唇を触れあわせたままでくすりと笑いを零してる薫くんは、そのことに気付いてる?



「あっ、は……、かお、る………」

そんな俺の思考回路は、直ぐにその手によって濁らされて白く染められていくのだけれど。

 

END

 

薫くんの声が好きなのは僕です
ブリッツ5daysの2日目のオフショで「それめっちゃ嫌やな〜」って笑ってる薫くんは反則です
1人で悶えてます