君に触れるたびに、君へと近付いて

君を感じたまま、僕は満たされる

 

君に触れるだけで

 

例えば、手。
指先を絡めて繋ぐだけで、君との距離がまたひとつ近付く。

例えば、体。
抱きしめて溶け合うだけで、身体以上に俺の心は満たされる。



君じゃないと、絶対に感じることのできなかったぬくもり。

君が与えてくれたもの。



「ダイくん」

擦り寄ってくる暖かな身体。
柔らかな髪が、頬を擽る。

ふ、と距離が離れて。

頬にそっと、口付けられる感触。

「ダイくん」

ほんの少し、甘えを含んだ声で俺の名前を呼ぶ君。

いつも、そう。
こんな些細な一瞬一瞬に、愛しさが溢れてとまらんくなる。

「トシヤ」

名前を呼んで両手を広げてやると、ふわりと胸の中に飛び込んでくる細い肢体。
指先で唇をなぞって、その軌跡を追うように口付ける。
首に回される細い腕。

口付けたまま、座っていたソファに押し倒す。
久々に照明の下で見る白い肢体は、作られた彫刻のようにキレイで。
口付けて、噛み付く。

「ダイ、…っ」

痛みに歪むその表情。
代償に残る赤い跡は、君以上に俺が欲しがる『シルシ』

痛い思いなんて、本当はこれっぽっちもさせたくないけど。

「トシヤ…ごめんな」

白い肌に咲いた赤い華をなぞりながら、零す謝罪。
きっとトシヤに本気で嫌がられるまでは、こうやって何度も求めては痛い思いをさせるんやろうと思うと胸が痛む。

それでも、身体はトシヤを欲してやまなくて。

眉根を顰めたまま、這わせた指先で身体をなぞっていると。
トシヤはゆるゆると俺の頬に手を伸ばし、ふわりと微笑んだ。

「謝らないでよ、ダイくん。俺、うれしいんだから」

これは、ダイくんのものだって。
そういう証でしょ?
なら、どんな痛みでも耐えられるよ。

「トシヤ…」

君は気付いてるのかな。
その言葉に、その表情に、俺がどれだけ救われているか。

「ダイくんが俺のことを求めてくれるなら、俺もそれに全身で応える。
 伴う痛みなんて、微々たるものだよ」

直向きに自分のことを想ってくれる恋人は、いつだってそう微笑んでくれた。

「トシヤ…」
「だいすきだよ、ダイくん」

かしゃんと、硝子で出来た鎖に繋がれる感覚。
繊細すぎる素材で作られたそれは、引っ張れば簡単に砕けて粉々になってしまう。
何て脆い。

だからこそ大切にせなあかんってことを俺に教えてくれたのは、他でもないトシヤやった。
愛されることよりも愛せることが大事なんやと。
トシヤはいつだって、その存在をもって俺に教えてくれる。



かけがえのない、何よりも愛しいその存在。



「ダイく………」

締め切った室内に、籠もる熱気。
引き寄せられるがままにトシヤの身体に覆い被さって。

繋がった部分から溶け合うような、錯覚。
掻き抱いた身体はひどく熱を持っていて。
暖房がないと寒い時期にもかかわらず、触れ合った肌はうっすらと汗を浮かべていた。

「トシヤ…」

緩く抽挿を繰り返しながら、嬌声と吐息の零れ落ちる口唇に貪るように口付ける。
首に回された手が、俺の髪をくしゃくしゃと掻き混ぜて。

「ダイくん、もっと…」

求められる声に、煽られると同時にひどく安堵するのがわかる。

本格的に腰を打ち付け始めれば、鼻にかかった甘い声が耳元に落ちて。
首に回された手に力がこもって、さらに身体を密着させるように引き寄せられた。

「…だいすき…」

譫言のように繰り返される、睦言。

トシヤに触れるたびにその存在へと近付いて。
トシヤを感じたまま満たされるこの幸せは、他のどんなものにも代え難い。

「愛してんで…」

その耳元に囁けば、ふわりとやわらかい笑みが浮かべられて。
涙で滲んだ瞳が此方を見つめて緩くカーヴを描く。

その目蓋にひとつ、口付けを落として。
微かにしょっぱいその味に笑いながら、その身体を掻き抱いた。

後は言葉もなく、2人絶頂へと息をつく間もなく上り詰めて。

「ダ、イ…ッ!!

「…ッ」

襲いかかった強烈な快感に抗うことなく、果てる。

心地良い安堵感と甘い余韻は、そのまま長い時間身体の隅々までもを満たしていて―――






場所をベッドに移動して、ウトウトと微睡んでいるトシヤを横目に紫煙を燻らせていると。

「ダイくーん……」

どことなく眠たそうな、いつものゆっくりな口調がさらに舌っ足らずになった感じで
トシヤが俺の名前を呼んだ。

「ん?」

短くなりかけていた煙草を灰皿の上で捻り、伸ばされた腕に抗うことなく抱き寄せられてやる。
眠たいのか、じんわり暖かい肌。冷気の触れていた身体にはそれがひどく心地良い。

「暖かいなーお前」
「ダイくんが冷たいんだよー」

ぎゅ、と抱きしめてやれば、同じように抱き返す身体に力がこもって。
少し顔を離せば、とろんとした瞳と目が合う。
クスリと笑って。そっとその距離を詰めて、口付けあう。



満たされて、与えられて、満たされて。
求められて、与えて、もっと与えて。

愛しさ、ぬくもり、心地良さ。
幸せな甘い感情、感触、感覚。

トシヤが与えてくれるから満たされるわけで。
トシヤやからこそ満たしてくれるわけで。

俺の『愛しい』が直結してる、その存在。

今はただ、この気持ちを絶やさないように。
俺は祈るように、強く強くその身体を抱きしめた。

 

END

 

1年くらい前に書きかけてた話
いっぱいあります、そういうの。爆
タイトルはキュリオの曲から この曲すきなんです