―――最悪や
布団に半分顔を埋めた状態で。
俺はちょっと泣きそうになりながら、大きく溜息を零した。
事の発端は空き時間に出かけた某大型電気店でのひとコマ。
先日発売になったゲームを購入したいというトシヤに連れられ、派手にディスプレイされたゲームコーナーをうろうろしていると、
ふとデモが流れていたあるゲームが気になって。
立ち止まって見ていると、やたらリアルなグラフィックで表現された主人公らしい女の子がカメラを持って薄暗い場所を歩いていた。
背景はやたら古い日本家屋みたいで。どうもホラーの類らしい。
「…どんなゲームなんや?」
首を傾げつつ見ていると、薫くん?と頭上から声がかけられる。
「あぁ、もう買ったん?」
声の主であるトシヤの手に提げられた袋を見てそうたずねると、トシヤは嬉しそうに頷いて。
続いて視線を俺の見ていたテレビ画面にうつした。
「何真剣に見てたのー?って、このゲームいいよ!」
「へ?お前やったことあんの?」
画面を見てすぐに反応を示したトシヤに少々驚愕しつつも、そう問い返すと。
「だって今回俺が買ったゲーム同じ会社が作ってるやつだもん」
あのねー、これー、と独特の口調でトシヤが画面の横に置かれていたあるゲームのソフトを指差す。
「どんなゲームなん、コレ?」
パッケージを裏返しながら聞くと、嬉々として語り出すトシヤ。
大まかに解釈すれば、なんでも『罠を仕掛けて敵を倒す』ゲームらしい。
「前作がすっげ当たりだったの。おもしろいよー」
「へぇ…」
罠を仕掛けて、ねぇ…。見た目結構おもしろそうやけど…。
「それでね、こっちはめっちゃくちゃ怖かった!!」
「そうなん?」
次にトシヤが指差したのは例のデモ画面。
まぁ見た目からして結構キてるで、コレ。
「プレイしてて俺日本家屋に住んでなくて良かったと思ったもん!
振り向いて幽霊いたらどうしようとか真剣に考えたよ。それくらい怖かった」
「…マジで?」
そういう系好きそうなトシヤがそこまで言うって…どんだけ怖いん、ソレ。
「すっげリアルなの。カメラのファインダーを覗いて霊と対決していくんだけどね…」
トシヤの説明を聞きつつ、もう一度視線を画面にうつす。
出てきた霊に悲鳴を上げる女の子。悪夢に魘されて目覚めた瞬間の場面。
うわ、霊もめっちゃリアルやんコレ…いや、あかんて、俺絶対無理。
こういうんホンマにあかんのやけど。
何て言うんやろ、怖いもの見たさっていうんかな。
そういうのもあって、何でか目が逸らせへん。
「薫くんダメっしょ、こういうの」
「あー…あかんわ、絶対無理」
「部屋真っ暗にしてね、ヘッドフォンつけながらやったら最高に怖いよ」
「いや、したないわそんなん」
そんな話をしとったら、いつの間にか集合時間が迫っとって。
俺とトシヤは慌ててスタジオに戻って仕事に取りかかった。
結局、俺はその話をそこで忘れてもとって。
仕事も終わって帰ってきて、疲れとったんかベッドにぶっ倒れたら意識がなかった。
で、目が覚めたんがついさっき。
真っ暗な部屋の中。
こういうときに何でか知らんけどいらんことって思い出すんよな。
そう、俺は今まさにこの状態で、トシヤと話していたホラーゲームのことを思い出してしまったわけで。
「うわ、最悪……」
日本家屋でもないのに、自分の部屋が例のデモ画面の背景とダブる。
振り返って何かおったらどうしようって、おるわけないってわかってるんやけど、そんなことを考えて寝返りもうてずに。
部屋の隅に霊がおったら、とか考えだしたらほんまマジ怖くて。
「マジ勘弁してくれや…」
ええ年して情けない話やけど、半泣きの俺。
いや、いくつになっても怖いもんは怖いって。ホンマに。
いらんこと考え出したらとまらへんのが人間ってやつみたいで、どんどん追いつめられていく。
いっつもやったら仕事でもして気分転換しよってなるけど、今ベッドから出るのがホンマ怖い。無理。
埋もれたベッドの中でごそごそと手を動かして、携帯電話を探し出す。
程なくして手に当たった硬い感触を引き寄せ、折りたたんでいたソレをパチリと広げて。
明るく照らされる手元。
履歴を呼び出して、あれこれ思案する。
―――ええ年した大の大人が怖くて寝れへんとか、そんなアホなことを話せる人間も限られてくるわけで
結局……
「こいつしかおらんのか…」
ディスプレイに表示された名前は、俺がこうなった原因でもある―――トシヤ。
「…絶対バカにされる…」
けど、これ以上1人でおるのも耐えられんくて。
プライドと恐怖心除去を天秤にかけて、結局俺が選択したのは……
『もしもし?どうしたの薫くん?』
プライドより恐怖心除去やった。
「あ、トシヤ…?起きとった…?」
何回かのコールの後にすぐに聞こえてきた声に、これ以上ないくらいほっとしながら携帯電話を握りしめる。
『うん、起きてたけど…。薫くんこそどーしたの?こんな時間に』
何かあった?と問いかけるトシヤの声。
緩く恐怖心が半減していくのがわかる。
「や、何かあったっていうか…」
『ん?』
「何もない…ん、やけど…」
『へ?そーなの?』
…やっぱ言えそうにない。怖くて1人が耐えられへんかったとか。
「………」
『………』
しばし落ちる沈黙。
電話をかけたのものの、どう切り出せばええかも皆目検討つかん俺。
別に、今何しとんとかって普通に聞けばええ話やのに、それすら出てこずに。
すると、思い当たる節があったのか、しばらく黙り込んでいたトシヤが不意に口を開いた。
『あの……さ』
「なん…?」
『もしかして薫くん………、今頃になって怖くなった…とか?』
「………」
おそるおそる問いかけてきたトシヤ。
…図星、や。
『え、マジで…?』
「…何やねん、お前が悪いんやんけ…」
何だか急にバツが悪くなって、思わず悪態をつく。
電話の向こうで、トシヤがふっと笑う気配。
うわ、笑われた。めっちゃ情けな、俺……
「笑うなや…こっちはめっちゃ真剣じゃボケ」
言ってることが子供地味てんのはよくわかってるけど。
どうにもとまらへん。
『や、薫くん…か、可愛い…』
「はぁ?」
こっちは真剣に怖がってんのに。それを可愛いやと?
『やべぇ、ウケる…っくく…』
「………」
…やっぱり電話するんやなかった…
「もぉええわ。お前に電話した俺がバカやった」
そう言って電話を切ろうとすると、待って待って、と電話の向こうで叫ぶトシヤの声。
「…何やねん」
『ごめんって。機嫌悪くしないでよ』
「悪した張本人が何ゆーとんねん」
『悪かったって。今から行くからさ、許して?』
「………」
その言葉にぐっと押し黙る。
『ね?』
「………ほなはよ来い」
10分以内な、と無茶苦茶言うと、なるべく早く行くから、と苦笑するトシヤ。
何でもええからはよ来いと告げて電話を切った。
携帯を投げ出して、もそもそとベッドの中に潜り込んだ。
トシヤと電話したことで、だいぶ恐怖心は拭われたけど。
それでもやっぱりまだ落ちつかへん。
「…はよ来い」
ベッドの中でもう一度、ぽつりと呟く。
数十分後にはその腕の中に抱かれているのであろう自分を想像して、目を閉じた。
―――今日ぐらいは、俺から求めたってもええかな
頭の中を占めていた恐怖心を、そういうことを考えることによって紛らわせる。
トシヤが知ったらきっとつけあがるから絶対言ったらへんけど。
―――きっとお前が傍におってくれたら、怖い思いなんてせぇへんから
だから早く来て。
その腕で俺を抱きしめて安心させてくれ、トシヤ。
END
あー怖かった!(お前か
初の敏薫
薫くんビビリ過ぎっすよね。笑
いや、僕が実際にゲーム見て思ったことを書いてみたんですけど
とっちが実際にこのゲームをやってるかどうかは知らないです。爆
レビュー見に行っただけでビビった!怖かった!!
僕は絶対あぁいう系のゲーム出来ないです、ホントに
あー本番書きたい(力尽きたらしい