群青の、シーツの波で

白い肢体が、揺れる
―――

 

SEA BLUE

 

暑い夏の夜。
冷たく満たされた部屋の中で、素肌を合わせて。
シーツの海にダイヴする。

熱を冷まそうと被った冷水も最早意味を持たず、熱く火照ってくる身体。
それが肌を合わせているからなのか、それともこの行為に興奮しているからか。

顔をつきあわせて、おかしくもないのに二人してくすくすと笑いを零す。

「トシヤ」

甘く降ってくる口付けを受け入れて。
トシヤは京の首に手を回した。

「ん……」

触れるだけのキスでは満足出来ずに、自分から舌で口唇を割って。
絡められてきた舌に、京もにやりと笑ってキスを返す。
クーラーの稼働音を掻き消す、濡れた音。
それが自分たちをさらに煽りたてていく。

「きょーくん…ッ」

濡れたままの髪。
乾いているときはそんなに気にならないけれど、こうしてみると幾度か染色を繰り返した髪はやはり軋んでいて。
ぎゅっと京の頭を抱え込みながら、口付けに応えるトシヤ。
飲み込めない唾液が頬を伝って流れ落ちる。

「……っ、は…ぁっ…」

口腔を犯される口付けは、いつだって酸欠状態を引き起こしかけて。
足りない酸素を求めるようにさらに開けた口が、京の行為をエスカレートさせている手助けになっていることにトシヤは気付いていない。
息苦しさと、口腔の性感帯を刺激されての二重効果で潤ませた瞳。
赤く頬を上気させたそんな表情が加虐心を煽っていることに本人は気付いていないというのだから、性質が悪いと京は思う。

口唇を滑らせて、日に焼けない白い首筋を食む。
ツアー中と違って肌を露出することのない今だから出来るこの行為が、京はわりと好きだったりする。
鋭い歯を立てれば、その痛みに身体は震えて。
傷口を濡れた舌で舐めると過敏に反応を返す身体が、愛しい。

「京く……」

抱きかかえられる頭。
トシヤの長い腕は、京の頭をいつだってすっぽりと覆ってしまう。
貪っていながら貪られているのは実は自分の方なのだろうか。
トシヤの白い肢体に赤い華をいくつも咲かせながら、京はたまにそんなことを考える。

ぎゅ、と髪を引っ張られて。
見せつけるようにして胸の突起に舌を這わせながら、顔を上げた。
顔を紅潮させたままで、赤い舌をのぞかせるトシヤ。
キスの強請るそんな些細な仕草すら、妖艶で淫猥で。

望み通り口付けを落としながら、遮るもののない素肌を指でなぞりあげる。
くすぐったさにか震える身体。
辿り着いた先、早くも快感の兆しを示し始めていたソコを手で握りしめると、塞いだ口から小さく声があがって。
緩く握って扱きあげると、トシヤが首を打ち振って口付けを解いた。

「はぁっ…んーっ……」

ぎゅ、と抱きついてくる身体。
濡れた熱っぽい吐息が首筋にかかって。
耳元でダイレクトに響く甘えた声に、ぞくりと身体が粟立つ。

「もうこんなに感じてんの?」

仕返しのように、耳元で囁いて。ピアスが付けられたままの耳朶を甘噛みする。
カツン、と硬質な物質がぶつかり合う音。
這わせた舌に感じる金属と耳朶の相反する感触がおもしろくて、何度も繰り返すとトシヤが首を竦めた。

「きょ、うくんだって……」

は、と荒い呼吸の中で紡ぎ出されたトシヤの言葉。
反応仕掛けていた自身を何の前触れもなしに握りしめられて、今度は京がびくりと身体を震わせた。

「お前…!」
「口でしてあげる。じっとしててよ」

組み敷かれていた身体を起きあがらせて、トシヤが淫猥に笑う。
何にも知りません、なんて反応をしながらもこうやって唐突に駆け引きに出るトシヤに、京は振り回されっぱなしで。
ますます性質が悪い、と思う。

でもそんなじゃじゃ馬を乗りこなすのも嫌いじゃなくて。

「……っは…」

ペロリと一舐めして口に含まれたソレ。
快感を引き出そうと忙しなく動く舌に、京は無意識のうちに熱っぽい吐息を吐き出す。
遊んでいたというだけあって、同性相手は初めてであったにも関わらずトシヤは舌使いが器用で。
簡単に高揚させられていく身体。…最もそれはトシヤにしてみれば同じ言い分であるらしいが。



「京くんもエッチ上手いじゃん」
「そうか?お前も上手いと思うけど」

初めて肌を合わせた後、煙草を燻らせながらそんな話をした覚えがある。
突っ込む・突っ込まないはさて置き、身体を高揚させていくテクニックはお互い認め合うものがあった。
それが好きな相手なら尚更気持ちがいいわけで。



「トシヤ、も、イく…」

顔にかかってきた黒い髪を掻き上げると、トシヤが視線だけを此方に寄越して目で笑った。
声が出せないかわりに、こくりと頷く。
そんなトシヤの舌使いに追い上げられるようにして、京はトシヤの口腔に悦を吐き出した。



相変わらず頬を上気させたままで濡れた口元をぐぃ、と拭ったトシヤ。
京にしなだれかかるようにして身体を押し倒すと、ベッドサイドに放りっぱなしだった潤滑剤を手にとって。

「次は、俺の番」

京の耳にちゅっと音をたててキスを落とすと、ごろりとその横に寝転がる。
それを追うようにして身体を起こした京の首に、手を回して。

冷房で満たされていたはずの室内。
でもお互いの身体は汗で濡れていて。触れあった部分が熱くて溶けそうな、錯覚。

潤滑剤が絡められた指を、体内に招き入れたトシヤ。
何度経験しても慣れない異物感だけはどうしようもなくて。
息を吐き出しながらなるべく力を抜いて、この瞬間をやり過ごす。
その後の快感に比べたら、微々たるものだと暗示をかけて。

そんなトシヤに、京はただ口付けを繰り返す。
甘い言葉だとかそんなものよりも、こっちの方が落ち着くとトシヤが言ったからだ。
身体のあちこちに口付けを落としながら、ゆっくりとソコを解していく。
内股にいくつも赤い跡を残すと、京はそれを見ながら満足げに微笑んだ。

「きょぉ…く……」
「ん?」

中を探る指を止めないままに、反応して蜜を零していたトシヤ自身を悪戯に口に含んで。
先端を甘噛みすると、ひく、と身体が反応する。

「このまんまイかしたろか?」

3本に増やした指で中を抉るように動かしつつ、ぺろりとソレに舌を這わせて。
微笑む京に、トシヤは顔を赤くしたままでふるふると首を横に振った。

「どないして欲しいん?」

身体を起きあがらせて。トシヤと視線を絡ませたまま、京が問いかける。

「………」

あー、とか、うー、とか。
言葉にならない文字の羅列を繰り返すトシヤに、顔を近付けて。

「トシヤ?」

京が意地悪くたずねる。
その顔には、シニカルな笑み。

「………れてよ」

視線を外すことも叶わず、消え入りそうな声で呟く。
羞恥のあまり顔はこれ以上ないくらい真っ赤で。
開いた片手をトシヤの頬に当てると、びくりと身体を震わせた。

「入れてんやん?」

ほら、と中に入れたままだった指を動かす。
繰り返した行為で前立腺の場所も性感帯も全部見破られているトシヤにとって、これ以上の攻撃はない。
限界の近い身体は、少しの刺激で容易に高揚して。

「京、くんがいいんだ…って!」

必死に腕を掴みながら、トシヤが言い募る。
潤んだ瞳。濡れた口唇。紅潮した頬。
何処か泣き出しそうな切羽詰まったこの表情が一番煽られると、京は思う。

「……ええよ」

目蓋の上から口付けを落として。
散々嬲っていた指を引き抜いて、ソコに再び滾った自身を押し当てる。
ぐちゅ、と濡れた音が響いて。
ぎゅっと目を閉じて抱きついてくるトシヤの鼻の頭に口付けを落とすと、京はその細い腰を抱えて中に押し入った。

「ッ!!」

異物の挿入を拒もうとする動きを強引にねじ伏せて、先端を滑り込ませる。
息を詰まらせるトシヤの頬やこめかみに幾つも口付けを落として。
苦痛に強張らせる身体の緊張を解きほぐしながら、自身を沈み込ませていく。

視線を落とした先、開かせた股の内側に、いくつも咲き乱れた赤い華が目に入って。
膝の裏にかけていた手を解いてそこに指を滑らせると、ひく、と足が震える。

濡れた目で此方を見上げるトシヤ。
噛み付くように赤い口唇に口付けを落とす。
どうしてこうもトシヤの白い肌に赤い色というのは扇情的なんだろう、と京は思った。
誘ってやまない口唇も、頬も、残した跡も。
どれも違う赤色なのに、扇情的なのには変わりなくて。
煽られるがままに、トシヤの身体を貪る。
後はもう、2人して溶け合うだけだった。






群青のシーツの波で、白い肢体が揺れる。
波音ではなく、ベッドの軋む音に身体を攫われたまま、二つの肢体は絡み合う。
燦々とした日光の元で晒せない白い肌に、お互いのモノであるという所有印を刻みつけて。



人工的な楽園の中。

ただ熱に、溺れる。

 

END

 

初敏京
エロですね。爆
…書きたかったんです。苦笑
冒頭の2行は結構好きなフレーズですね
何かベッドシーンを表す言葉って直接的な表現よりも比喩が好きなんです