アイラヴユー

夢が叶うなら

君の声を、聞かせて

 

アイ・ラヴ・ユー

 

トシヤとケンカした。
原因なんて覚えてない。
たぶん、発端はそれくらい些細なことやったんやろう。

「…ッ…クソ…」

がしがしと頭をかいて、手を伸ばしたのはくしゃくしゃになった煙草のソフトケース。
やり場のない感情をぶつけるかのように、手の中でいっそう形が歪になったそれを
机の上に投げつけて。
そのままドサリと背後にあったソファに身体を投げ出した。



思えばいつだって、こんな風にケンカしては後から溜息をついてる。

胸を締め付けるは、小さな後悔たち。
瞼の裏に浮かぶのは泣きそうに歪んだ、君の顔。

そんな顔をさせるつもりなんて、これっぽっちもなかったのに。



しん、と静まった空間に、秒針が時を刻む音だけが響く。

本来なら、今頃ふたりで遅い夕飯を食って、テレビでも見ながら
だらだらじゃれて笑っている予定だった。
過密スケジュールで思うように休みも取れない自分たちにとって、
これほど貴重な時間はなくて。
それなのに今、君は隣にはいない。



愛しいと思う気持ちは、確かに変わらないのに。
忙しさに忙殺されて、思い遣ることも、癇癪を起こした君の感情を
受け止めてやる余裕すらも失ってて。
いつの間にか君が傍にいることが当たり前になってて、
傍に在れる幸せを曖昧に捉えていた自分に気付いた。

幾度も繰り返してきたこと。
そのたびにふさぎ込むちっぽけな俺たちは、いくつ歳を重ねても変わらないまま。

そんな俺たちを繋ぎ止めてた愛の言葉は。




「ねぇ、薫くん―――

耳によみがえる、甘えた君の声。
泣きそうに歪んでいた残像が、あのときの淡い微笑みに変わっていく。

「俺のこと、好き?」

素直になれない俺に、君が問いかけた俺の答え。
君に震えながら触れた時から、解けない魔法。



―――好きやで」



脳裏に浮かぶ、潤んだトシヤの瞳。
甘く弧を描いたそれが、ゆるりと閉じられて。
瞼に口付ければ、その顔にやわらかく浮かべられた笑みが
どれほど自分を満たしてくれてたのかを思い出した。



先程まで胸に渦巻いていた憤りが姿を消し、かわりに胸を満たしたのは愛しいという想い。
透明な水のように溢れる気持ちを湛えたまま、燻らせていた煙草を灰皿の上でもみ消した。

「………迎えに行くか…」

携帯と財布をポケットにねじ込んで、立ち上がる。
ケンカして折れるのは性に合わへんけど。
今日みたいな神妙な気持ちのときは、素直になってもええんちゃうかなって自分に言い聞かせて。



一緒にいる時間が長ければ長いほど、新鮮さに欠けて惰性になりがちやけど。
付き合いだしたあの頃みたいに、君といる幸せを噛みしめてみるのも大事なことなんやろう。

いつもは気恥ずかしさが先行して、なかなか素直になれへんけど。
君のことが愛しいから。



だから今日は、君が問いかける前に声に出そう。

君に初めて触れた時から、解けない魔法の言葉を。

 

END

 

ブレスの曲です
この曲がとにかく大好きなんですよ
すごい幸せになれるっていうか
しかしトシヤ最後まで出てこなかったですね…汗
お粗末様でした