口唇にやわらかな感触が触れる感覚で、目が覚めた

 

indulge in liquor

 

「んっ…、薫く、ん……?」

薄暗い部屋の中。
口唇にやわらかな感触が触れる感覚で、目が覚めた。
うっすらと目を開けた先には、俺の身体の上に跨っている人の影。
通りで少し重いと思った、とまだ思考回路に霞がかかった状態で考えながら
おそらくその原因であろう人間の名前を呼ぶと、ふわりと屈み込まれて口唇を塞がれて。

「薫くん…?」

ちゅ、と。
先程俺を眠りの淵から呼び覚ました感覚が、口唇の上に落とされる。
俺が眠る前までは明らかに爆睡
―――もとい、泥酔していたはずやのに。
部屋の中が真っ暗な状態からしてまだ夜明けは程遠く、従って目覚める時間でもないことが
時計を見なくても容易に想像がついて。
それやのに何でこんな真夜中に目を覚ました挙げ句、人の上に跨ってキスしてんねやろとは思うものの
身体の方は条件反射のようにその細身を抱きしめていた。

「ダイ」

その口唇が紡ぐ名前は、信じられないほど甘くて。
両頬を包み込むように手を添えると、掌越しに熱が伝わってきた。
酔って寝惚けてるみたいやな。
少しずつクリアになり始めた頭でそう結論付けながら、薫くんのしたいようにさせていると
口唇の間を割ってぬるりとした感触のものが入り込んでくる。

―――近年稀に見るくらい積極的やな…

別に消極的なわけやないけど、どちらかと言えば受身な薫くんがこうして
自分から舌を絡めてくるなんて滅多にないことで。
珍しいこともあるもんやなと思いながら、数センチ先にある薫くんの顔をぼんやりと見つめる。
閉じられた瞳。薄く開いて俺と目があったかと思うと、すっと恥ずかしげに逸らされて。
その、流し目に。ひどく煽られて、鼓動のテンポが早まったのを感じた。

ちゅ、と濡れた音が静かに響き渡る空間で。
抱き寄せた身体は、布越しでもその熱を伝えてくる。

―――これは据え膳、ってことで、いただいてええんかな…

そんなことを頭の隅で考えながら着ていたシャツの裾から手を差し入れると、
薫くんがびくりと身体を震わせて俺の手を押さえつけた。

「…あかんの?」

口唇が触れあう距離でそうたずねると、薫くんは困ったように眉根を寄せながら

「俺がする…っ」

そんな一言と共に、再び俺の口唇を塞いでくる。
俺はと言えば、薫くんの言葉を理解するまでに結構な時間を要して。

俺がする。

―――俺が、する?

「え?え?え?薫くん?」

ようやくその言葉の意味を理解し、テンぱる俺を余所に薫くんはするりとTシャツを捲り上げてきて。
現れた俺の胸元にちゅ、と口付けを落としてくる。
微かに濡れた口唇で触れた後、徐にそこを吸い上げて。

「っ!?」

ぴりっとした痛みが走って、思わず顔を顰める。
覚えのある感覚が下腹の方から背中へ、さらに脳髄へと走り抜けていく。

「かお、る…!?」

闇に浮かぶ俺の肌に残った跡を満足げになぞっている薫くんの名前を呼ぶと、
気怠げなしぐさで視線が此方に寄せられて。
艶っぽい雰囲気にごくりと息を呑む俺と視線を合わせたかと思うと、
ちろ、と赤い舌をのぞかせてぺろりと突起を舐め上げてくる。

あまりに扇情的な光景に、視覚的に興奮して。
理性の手綱がぶちぶちと音を立てて千切れていく。

飽きもせずに俺の肌に口付けを落とし、時折強く吸い上げては跡を残していた薫くんは、
不意に伸び上がって俺の口唇にキスを落としたかと思うと、するりと猫のようなしぐさで
俺の下肢へと屈み込んだ。
ズボン越しにソコへ口付けられ、僅かに反応しかけていたモノが一気に煽られて。

「薫…っ…」

何処か切羽詰まった自分の声。
そんなことを気にしていられないくらいに、与えられる快感に目が眩んで。
ズボンを脱がせたかと思うと、薄い布越しにソコに口付けを与えられ、
そのままかぷ、と咥内に招き入れられた。

「…ッ!!」

あまりに淫靡な光景に、一瞬言葉を失って。
視覚から与えられた刺激が、そのまま思考回路と直結して一気に自身の反応へと変換される。
濡れた、やわらかな舌が布越しにソコをなぞって。
時折悪戯のように先端を吸われ、それに呼応するようにジワリと布地が濡れていくのを感じる。

普段ならまず有り得ない光景に、俺はただ目を見開いて現実を受け止めるだけで精一杯。

「んぅ………ダイ…」
「っ、薫、ちょぉ!」

柔く歯を立てられて、慌ててその頭を押さえつける。
パンツを穿いたままの状態でイかされるとかそれだけはホンマに勘弁してほしい。
そんな俺の無言の叫びが届いたのか届いてないのは定かじゃないけど、
薫くんがゆっくりと顔を上げてその布地に手をかけて。
露わになった俺のモノに手をかけると、やおらソレを口に含んだ。

―――何、コレ。現実?夢オチとかじゃなくて?

あまりに非現実的な光景に、思わず自分の中で自問自答。
そんな俺の思考回路を、薫くんの舌技がたちまちに乱していく。

―――つか、うますぎ…

仕掛けるのには慣れてるけど、仕掛けられるのには慣れてない。
それこそ片手で足りる回数ほどしかやってもらったことがないのに、
やたらとツボをついてくるのは同性ゆえやからか。
暖かい粘膜の中で刺激されていたソレは、先走りの液が薫くんの唾液と交じって
濡れた音を奏で、聴覚すらも奪い始めて。

「ん…ッ……薫…」

耐えきれず零れた熱い吐息。
俺の下肢に沈んでいる頭に手を添えると、それを合図のようにして
薫くんはさらに俺のを深く銜え込んで。
唾液が嚥下される度に喉が締まり、その刺激が自身を締め付けて余計に情欲が高ぶっていく。
臨界点はもう目の前で。

「ゴメン、薫ッ」
「んぅっ!?」

一言謝って頭を押さえつけ、喉の奥に突き込むようにして腰を揺らし、その咥内に白濁を叩きつける。
薫くんは目を見開いて苦しげに呻いてたけど、やがてその咥内を満たした液体に眉根を寄せて。

「あ、ごめ…。ええから、出し?ほら」

今にも零れ落ちそうなほどに目を潤ませていた薫くんに、ようやく我に返った俺は慌てて近くにあったティッシュを引き寄せ、
その目の前に差し出す。
すると薫くんはふるふると首を横に振って、ぎゅっと目を閉じたかと思うとごくりと音をたててそれを飲み込んでしまった。

「ちょ、薫…!」
「………にが」

ぽつり、と濡れた口元を手で拭いながら薫が呟く。

―――そりゃ、そうやろ…

当たり前と言えば当たり前の言葉に、少し脱力。
俺は全然構わへんけど、決して美味しいもんじゃないんやから無理して飲まんで良かったのに。

そんなことを思いながらその身体を抱き寄せると、ほとんど抗うことなく腕の中にすっぽりと収まる薫くん。
頬が、身体が。触れたところがひどく熱い。
ちゅ、と首筋に口付けを落としてくる薫くんの身体をまさぐって、ソコに手をかけるともう反応してるのが顕著に読み取れて。

「…っ、ア、ダイ…ッ」

零れた熱い吐息が、首筋にかかる。
ズボンを脱がせないままに手を突っ込んで直接触れてやると、一際甘い声が耳元で響いて。
早くも先走りの液を滲ませていた先端を親指で刺激しながら、溢れ出てくる蜜を指先で掬い取る。

―――余裕無いな、俺…

イってまだ間もないというのに、薫くんのその声だけで簡単に煽られて。
その身体が欲しくてたまらんくなる。
強引なのは自分でもよくわかってた。…けど、どうにも止まれんくて。

「ッ、ダイ…!!」

絡め取った先走りの液だけを潤滑剤に、強引に蕾を押し開く。
俺の背中に回っていた薫くんの手が、ぎゅっとTシャツを握りしめてくる。
そんな薫くんの身体を片手で抱きしめながら、緩く粘膜を指先でなぞると、ゆっくりと中に指を沈めた。

「ンゥっ……!!」

触れ合う肌以上に、熱いその中。
いつもなら余計な力が入って異物を追い出そうと躍起になっているソコが、
今は俺の指を誘い込むように煽動して。
未だズボンも脱がせないままの狭い空間で馴染ませるように指を動かすと、
ゆっくりと引き抜いて本数を増やし、再び中へ沈み込ませていく。

「ア、ッ、ダイ…ッ」

縋り付いてくる、熱い身体。
いつもは苦渋が滲んでいるその声が、今日はやけに甘くて。
指をソコに沈めたままで下着をズボンごと脱がし、Tシャツを捲り上げると、ぷっくりと膨れた胸の突起に歯を立てた。

「ココ、触ってもないのにもうこんなしてんの?」
「や、っぁ…」

わざと意地悪く囁けば、薫くんは目をぎゅっと閉じたまま首を打ち振って。
それでも、俺の指を飲み込んだソコは強く収縮して、ひどく感じてることがわかる。

「やらしいコやな」

ちゅく、と音をさせながら耳に舌を突っ込んで囁いてやると、甲高い声をあげた薫くんの身体が震えて。

「っあ、ダイッ、も……」

腹の間で切なげに震えてる自身を擦りつけてくるように、薫くんが身体を寄せてきた。
もう限界が近いんやろう。強請るようなしぐさで、俺の反応を窺ってる。

「イきたい?」

軟骨に歯を立てて、直接的な言葉を吹き込む。
こくこくと首がもげるんやないか、と思うくらいに頷く薫くん。
そんな薫くんの、細い腰を掴んで。

「ふ、ぇっ…!?」

早急に押し開いていたソコに、薫くんの痴態に煽られてすっかり反応しきっていた自身を押し当てた。
本能からか、思わず逃げを打つ身体を押さえつけ、強引に腰を落とさせて。

「ダ、イ―――ッ!!」

太い楔を、ソコに突き立てる。
目の前で薫くんの身体が仰け反って。
白い首筋が露わになる。

そこに噛み付くように口付けを落としながら、未だ呼吸の整わない薫くんの身体を強引に揺さぶり出す。
最早抵抗する力も残ってないのか、薫くんは揺さぶられるがままに身体を揺らして。
その口から零れ落ちる、途切れ途切れな吐息と、押さえきれない喘ぎが、さらに俺を煽り立てていく。
いつもの気遣う余裕すら欠片もなく、ただ欲望のままにその身体に溺れていった―――



何度目かの情交の後に、不意に糸が切れたかのように意識を落とした薫くんに、これが最後やから許してな、と
心の中で謝りながら身体を揺さぶり、その中に熱い憤りを迸らせて。
荒い息をつきながら自身を引き抜いた。
ソコから濡れた音を立てて零れ落ちてくる、大量の白濁液。
幾度交わったのかわからないほどの量のそれに思わず目を見開き、苦笑する。
よくよく見ればそれは太股まで伝い落ちていて、その下のシーツすらもぐしょぐしょに濡らしていた。

意識を飛ばし、すー…と穏やかな寝息を立てている薫くんの頬に口付けを落とすと、
後始末をすべくその場から立ち上がる。
好き勝手した分、いくらなんでもこのままにしておくには忍びなくて。
心の中で詫びながらも、用意したタオルでその身体を拭い、後始末を済ませた後に
自分も簡単にシャワーを浴びてベッドへ戻る。
取り替えた清潔なシーツに横たわらせた身体を抱き寄せ、その頬に口付けを落として目を閉じた。
さすがの俺も限界やったらしく、眠りはすぐに訪れて―――






「うぁっ!?」

どさ、という何かが落ちる音で目が覚めた。
数時間前まであれほど淫靡な雰囲気が漂っていた室内は、今は差し込んでくる眩しい光によって
ひどくさっぱりとした印象に移り変わっている。
ともかく物音の原因を探ろうときょろきょろと周りを見回すと、隣にいたはずの薫くんの姿がいつの間にかなくなってて。

「薫くん!?」

ベッドサイドに置いてあった眼鏡を掴み取って起きあがる。
すると、ベッドの下から俺の名前を呼ぶ声が聞こえて。

「お前、何かした…?」

掠れた声で腰を押さえながら俺を睨みあげてくる薫くん。
どうやら昨晩の狂宴騒ぎはすっかり忘れてしまっているらしい。
明らかに俺が悪い、と言った顔で睨みつけられ、思わず苦笑が漏れた。
この分やときっと自分が仕掛けたことも覚えてないんやろう。

「…腰痛いん?」
「ひたすら鈍痛がしておまけに力入らへんのやけど」

どないしてくれるねん、と言わんばかりの表情。
言外に『今日のオフはお前のせいでつぶれた』と無言で責め立てられ、ますます苦笑は深くなる。

「…薫くんのせいやで?」
「はぁ!?何で俺のせいやねん!!」

俺の一言に、姫君の機嫌はすっかり損ねられてしまったらしい。

「まぁまぁ、今日は1日ベッドでごろごろしとこーや」

そんな薫くんを宥めるように俺はその身体を抱き上げ、ベッドに寝かせる。
隣りに寝ころぼうとしたのを手で制され、何かと思えば

「先に水取ってこい」

なんてつれないお言葉。

「はいはい、今日は何でも言うこと聞きますよ」

まずはご機嫌を取るために、言われた通りに台所へ向かった。



『酒に飲まれるようになった』と、本人も自覚してたけど。
まさかこれほどやったとは。

昨晩の痴態を思い出して、思わず頬が緩んだ。
普段はなかなか見れへん積極的なしぐさを思い浮かべ、さらに笑みは深くなる。
おまけに起きたら全て忘れてしまってるなんて、好都合この上ない。

―――また酔わせてみるのもええかもしれへん

片手でペットボトルを取り出しながら、そんな悪いことを思いついて。
にやけた面を両手で叩いて戻し、台所を後にする。
口元が緩んでしまうのはどうしようもなかったけれど。

「ダイ、遅い!!」
「はいはい、今行きますよ」

飛んできた罵声に鷹揚に答えながら。
俺はゆっくりと、ふて腐れてるであろう姫君の元へと足を進めた。

 

END