HONEY so sweet

 

「んぁっ!や…ンッ!!」

ソファの上。
煌々とついた明かりの下、頬を紅く染めたダイは肌を滑る指に霰もない声をあげ続けていた。

「いゃ…薫、く……ッ!」

ソファに沈みこんでいるダイの足の間に、跪いた薫が顔を埋める。
舌で形をなぞりあげ、先を挟むように愛撫を施すと、ダイが一段と艶っぽい声をあげた。
その様子を上目使いに満足気に見つめる薫。

当初は薫の頭を引き剥がそうとしていたダイの指も、今ではしっかりと髪を掴んでいて。
そこを押し付けるように引っ張っていた。
薫は根元まで口に含むと、溢れてくる蜜を掬うように舌で絡めとり、嚥下していく。
軽く歯をたててやると、ダイがびくんと体をのけ反らせた。

「あ…ン、薫…」

濡れた瞳で、濡れた声で薫の名前を口にするダイ。
いつもは人なつっこく笑うその瞳が、今は淫らに熱に溶けて潤んでいる。
薫は、その蕩けたようなダイの表情を見るのが好きだった。

「ん?」

薫は一度ダイのソレから口を離し、そっと上気した頬を撫であげる。
猫のように喉を鳴らすダイ。
快感に従順なその姿は、いっそ見事なほどに妖艶で。

「どうしたん?ダイ…」

濡れた指先で頬をなぞりながら問いかける。
ダイは目で必死にどうして欲しいかを訴えるが、薫は焦らすようにダイのモノを弄ぶだけで
一向にダイの望む行為をしてやろうとはしなかった。
敏感になっているダイは、先端を指でなぞられただけで熱い吐息を零す。

「ほら」

薫がそう言って、ダイの愛液が付いた掌を差し出した。

「すごいで?ダイの…」

くつくつと笑いながら、それを舐めあげる薫。
もちろん、ダイの羞恥心を煽る上での行動。

「そ…なの、舐めんといて……ッ」

息を荒げながら呟くダイ。
見られているという恥ずかしさと、焦らされているのとでもう我慢の限界だった。
ただただ、身体が疼いて。苦しい。

「おねがっ…薫…」

熱い吐息を零しながら薫に訴えると。

「どうして欲しい?」

薫が意地悪そうな笑みを浮かべて問い掛ける。

「……て」
「ん?聞こえへんよ、ダイ」
「舐め、て…」

か細い声で呟くダイ。

「…それだけでええん?」

薫がそう聞き返すと。
ダイが首を横に振って、言葉を紡いだ。

「……薫くんの好きにして」



「はぁッ…薫…っ」

自身を扱かれて、悩ましげに声を零すダイ。
先程から立て続けにイかされていて、全身を気怠さが支配していた。

「あぁ―――んっ!」

今日何度目になるかわからない、絶頂。
首筋に汗だか涙だかわからないものが伝う。
だが薫はまだ許してくれそうな気配はなく、精を吐き出したばかりのダイのソレを
再び残酷なまでの強さで扱き始める。

「かおっ、も、無理…ッ!」

弱々しく薫の腕を掴んで止めようとするダイ。

「何で?まだイけるやろ?」

何回でも出来るって言ってたやん?

そう揶揄して意地悪く薫が笑う。
ダイのモノをなぞりあげ、先端を抉るように爪を立てて。

「っ痛!」

ダイの瞳から涙がぽろっと零れ落ちる。
薫はようやくダイ自身から手を離すと、じっとダイの顔を見た。

「薫く…もう、許して…」

ダイがそう懇願すると。
くすっと薫は笑い、言った。

「ええよ。…犯したるわ」



薫はダイの横に座ると、ダイの体を抱き起こして。
ジーンズのジッパーを下ろし、自身を取り出す。

「おいで。ダイ」

甘い声で呼んでやると、ダイがゆっくりと薫を掴み、その位置に腰を下ろしていった。
慣らしもしていなかったが、イかされ続けてすっかり体の力が緩んでしまっているダイは、
少しばかり苦痛に口唇を噛みしめたものの、自らの体重だけで薫自身を飲み込んで。

全てが収まりきると、薫が動くようにダイを促す。
羞恥も忘れて、腰を動かしはじめるダイ。

やがて、それだけでは物足りなくなったのかダイが薫に懇願した。

「薫く…動い…ッ!」

不意にダイの腰に手が添えられ、持ち上げられる。
薫自身が抜け切るぎりぎりまで持ち上げられると、そこでぱっと手を離されて。
突き刺さる、杭。

壁を打ち破られそうなくらいの衝撃に、ダイの背中に苦痛が走り抜けた。
だが、それもすぐに快感へとすり替えられてしまう。
脳髄を焦がすほどの快感に。

「あぁぁ、っ、は……ンッ!」

薫の膝の上で、薫の手によって踊らされていくダイ。
おぼつかない手付きで薫のシャツのボタンを外すと、首筋に顔を埋め、ソコを強く吸い上げる。
下から突き上げながら、ダイの髪を愛おしそうに撫でる薫。

やがて、薫が再びダイを持ち上げると、腰が落ちるタイミングを見計らって思いっきり突き上げた。

「あああ―――ッ!!」

折れるほど体を撓らせると、ダイが精を放つ。
ダイがイったことによって締め付けが強くなり、薫もつられてダイの中に絶頂の証を吐き出した。



ダイの中から自身を引き抜く。
ずる、という生々しい音が妙に卑猥に聞こえて。
すっかり意識を飛ばしてしまったダイの体を横たえると、薫は頬にそっと口付けを落としてその身体を抱きしめた。

泣かせたいわけじゃない。
痛い思いをさせたいわけじゃないのだけれど。

たまに自分の中で芽生えるこの感情をぶつけるように、ダイを手ひどく抱いてしまうことがある。

嫉妬だとか、猜疑心だとか。
その日なたに咲く花のような、大らかさをもったダイに時折抱いてしまう、言いようのない感情。

万人に向けられるその笑顔すら、独占したいと思う自分を、ダイはどう思う?
重いって思う?ウザいって思う?

「…アホか、俺…」

頭を抱えて。
薫は頭の中を占める感情を一蹴すると、てきぱきとダイの身体の後始末にとりかかった。
幸いなことに、無茶な行為による傷はなかったらしい。

でも、それでも。
ダイを傷付けたのには、変わりはない。

「ごめんな、ダイ」

身体を綺麗に清めてやって。
抱えてベッドまで行けたらいいのだが、さすがに体格の差でそれは叶わない。
薫はベッドからタオルケットを取ってくると、ダイの身体に被せてやる。

「…頭、冷やそ…」

そう呟いて。
薫はバスルームへと向かった。

その背中がバスルームに消えたのを見計らって、ゆっくりと目を開けるダイ。



「…バカやなぁ、俺ら」

呟いた言葉は、白々しいほど煌々とした安っぽい光の中に消える。



その身体にたまった憤りを。思いを。
ぶつけてくるのを知って受け入れた。
なのにそれが逆に彼を苦しめているなんて。
滑稽だ、とダイは思った。

でも、話さなければ何も伝わりはしないのだ。

軋む身体を無理矢理起こして、壁伝いにバスルームへ移動する。
ひどい仕打ちをした変わりにと言って、思う存分甘やかしてもらうのも悪くない。

ひどいことをされたいわけじゃない。
もちろん優しくしてもらう方がうれしい。
甘やかしてもらえることが幸せだと思う。

でも、薫がこうして感情を剥き出しにする瞬間を、自分以外の人間に受け止めてもらいたいとは思わない。

薫はやさしいから。基本的に大事な人間には甘い。
そんな彼が感情のままに牙を剥く瞬間を見る方がおそらく貴重で。

薫がダイに対して感情を剥き出しにするのは、そこに多少なりと彼なりの甘えが含まれているから。
それは常々ダイに僅かながらの自惚れと優越感をもたらしていた。

バスルームのドアを開けると、白い湯気がふわりと立ち上って。
その向こう側で頭をシャワーに打たせていた薫の細い肢体に、ダイは後ろから抱きついた。

「わ、ちょ、ダイ!?」

突然覆い被さってきた恋人に驚いた声をあげながら振り返る薫。
間近で視線が絡み合う。

「ダイ、さっきはゴ…」

少しは冷静になって自分のしでかした事の重大さに気付いたのか、ダイの姿を認めて慌てたように頭を下げる薫の口元を覆って。

「なー薫くん」

ダイはにこりと笑った。

「俺、謝る言葉より、愛の言葉とキスが欲しいんやけど?」

薫はその言葉を理解するのに、ほんの数十秒時間を要して。
少しの間の後に、その身体を抱き寄せる。
いつだって寛大な恋人に、薫は参りました、と微笑んで。

「    」

そっとその耳元に、有りっ丈の想いを囁いた。



―――HONEY,so Sweet.

 

END