仮にも恋人と呼べる人間とふたりっきりの空間で
薄い布1枚だけで覆った身体
…極めつけに、下着は着けてない
この意図を、お前はわかってくれる?
花火
3rdshot
自らの心臓の音が聞こえるんじゃないかと思うくらい、鼓動が脈打ってて。
ダイの視線から顔を背けたまま、ぎゅうっと目を閉じる。
見なくてもわかる。
ダイの痛いくらいの視線が、俺の顔に注がれていることくらい。
決死の覚悟やった。
抱いてくれなんてよう言わん俺が、必死に考えた末の行動。
まさかこんな早い時間からダイが押し倒してくるとは思わんかったけど。
予定がちょっと早くなっただけ。
大した問題じゃない、けど。
心の準備…っていうんかな。
出来るはずもないけど、こんなにとんとん拍子で進んでいくなんて予想してなくて。
ダイの手際の良さにはいつも感服させられる。
あれよあれよという間に浴衣ははだけさせられ、既に肩から落ちて腕にまとわりついてる状態。
まぁ1枚の布を帯で締めてるだけなんて、脱がせるのにそんな手間暇かかるわけないけど…
俺にとっては永遠とも感じる長い沈黙。
それを破ったのは、吐息混じりのダイの掠れた声、やった。
「………反則や、薫…」
ぽつりと零された言葉。
ばさりと音をたてて、浴衣が捲りあげられ。
露わになる、脚。
ダイの手が強引にそれを割開いて。
「ちょっ、ダ……!」
そのまま足の付け根を強く吸い上げられる。
痛みに思わず抱えられた爪先が震えて。
「いっ………」
下肢に埋められたダイの髪を強く握りしめた。
じわりと滲む涙。
かたく瞑った瞳から、ぽつりと一筋零れ落ちて。
そのまま顔が上げられ、目が合う。
強い、視線。
まさに今、獲物を射て喰らおうとする、獣の瞳。
目が、逸らせない。
「誘い過ぎや…」
脚の間に割り込まれたまま、のし掛かられて。
口付けられる。
息もつかせてくれぬような強引な口付け。
苦しさに首を打ち振るが、しっかりと後頭部を掴まれていて。
解けた髪がぱさぱさと頬を叩くのみで、一向に離してもらえる気配はない。
酸欠で思わず意識が遠のき始めていた頃、ようやく口唇が離された。
肩で息をつく俺を置いて、そのままダイはベッドを降りてリビングへ行ってしまう。
朦朧とする意識の中、重たい身体を寝転がせてダイの後を視線で追った。
…何で?何で、1人にすんの…?
何処に行ってしまったのかと不安になっていた俺を余所に、ダイは手にボトルを持って
此方に戻ってきて。
先程までの定位置に戻ると、ん?と顔を覗き込んできた。
「何してたん…」
呟いた声が、自分でも信じられないくらいか細くて。
そんな俺を安心させるかのようにダイは微笑むと、コレ、と俺の鼻先で手にしていたボトルを揺らした。
「何、コレ…」
視線を移したその先にあったのは―――苺シロッ、プ……?
「はぁ!?」
思わず声を荒げた俺に、ダイはまぁまぁとにんまり笑って。
キュポン、と音をたててボトルを開けた。
中のキャップを引き抜いた瞬間に辺りに漂う人工的な甘ったるい香り。
花火と並ぶ夏の風物詩にかける、それ―――
「アホか!!てか、んなもんどないしてん!?」
さっきまでの雰囲気は何処へやら、ものすごい剣幕の俺に、ダイは指先に赤い液体を滑らせながら。
「んー?買おてきた。薫とかき氷食べよー思て」
「嘘やろ!!絶対嘘やろ!!」
じりじりとはだけさせられていた浴衣を取り抑えつつ、後ろに下がる。
対するダイはそれはそれは至極嬉しそうな顔で此方に迫ってきて。
とん、という音と共に、背中に壁の気配。
追いつめられたと悟ったと同時に、ダイに身体を押し倒された。
「往生際悪いで、薫」
「アホか!!往生際も悪なるわ!!」
「煽ったんは薫やで…?」
うん、俺が悪かった。もうせぇへん、絶対。
のし掛かってくるダイをこれでもかと睨みつけたところで、大した効果はないらしい。
それどころか全く動じひんこの男は、濡れた甘ったるい香りのする指先を俺の口唇に滑らせて。
「グロス塗ってるみたいやな」
くくっと笑う。
そうして濡れた俺の口唇を、のばした舌先でなぞって。
「…あま……」
そのまま口付けてくる。
否が応でも感じる、シロップの甘ったるい味。
粘土の濃い液体が、水分を奪って喉元を過ぎていく。
何かさえ知らなければ、普段使ってるような潤滑剤とそんなに質感の変わらないそれ。
でもこの匂いと味は、かき氷にかける苺シロップのものに他ならなくて。
ねちゃ、と粘着質の音がして、目を開けるとダイが濡れた指先でシロップを混ぜていた。
その指先から一筋、黒っぽい液体が滑り落ちる。
それはいつも行為前に塗り込められているものによく似た光景で―――
知らず唾を飲み込んでいたらしい。
ダイが口角をあげて微笑むと、欲しい?と問いかけてくる。
その、指先。
ギターを爪弾き、煙草を挟み、俺の中を暴く、白くて長い指。
甘い香りに濡れたそれが、ひどく蠱惑的で。
さっきまで嫌がっていたのが嘘だったように、言葉もなくただ1つ頷く。
そんな俺に、ダイはくっと喉の奥で笑って。
秘所に指の腹を当ててくる。
慣らされすぎた身体は、貪欲にもその指を欲しがって。
無意識のうちに、腰が揺らいだ。
襞をなぞるようにして擦りつけていたそれが、唐突に1本、中に滑り込んでくる。
「………っ」
大した抵抗もなく、飲み込んだ指。
道を作るように掻き混ぜて抜くと、すぐに新たに蜜を伴って突き立てられて。
「はぁ、っ、く……ぅ…」
俺の中を知り尽くした指は、簡単に弱いところを探し出して突いてくる。
何度経験しても、異物感と多少の痛みは拭い去れないけれど。
すぐに快感を拾うようになったこの身体は、痛みよりもその先にある快感を欲して。
そこはダイの指の形を喜んで受け入れ、蕩ける。
不意に爪先でソコを掠め取られ、ひく、と脚が宙を蹴った。
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