「…薫くん」
「んー?」
「薫くん、灰落ちんで」
「んー…」
「………」

 

G@ME

 

つれない空返事に溜息をついて、薫くんの口から銜えていた煙草を抜き取った。
ありがとうの一言もなく、視線は画面に釘付けのまま。
さっきから握りしめたコントローラーはせわしなく親指だけが動いてる。

クーラーで適度に冷やされたリビングの窓の外は気持ちええくらいの快晴やのに。
俺の美人さんな恋人はと言えば、先日買ってきたというゲームに余念がない。
休みの日は俺が起こすまでベッドで布団虫のくせに、今日はあろうことか俺が起きたら既に起きてて。
リビングに行ったらまだ朝も早い時間からPS2とソフトのパッケージが並べられたテレビの前に座り込んで画面を睨んでた。

「薫くん、ごはんは?」
「いや、いらん。てか今話かけんな」
「んなことゆーたって…」
「制限時間内に規定の大きさ超えな王様に怒られんねんて!!」

何やねん王様って。わけわからん、と思いながらも薫くんが必死に見つめてるテレビの画面に視線を移す。
緑色のちんまい生物が、必死に丸い物体を押している。
いや、転がしとんか、コレは。うわ、何か今生き物巻きこんだで。じたばたしてるし。グロ…。
画面の左には現在の塊の大きさを示す図。
あぁ、確かにまだ規定の大きさまでは程遠いな…。
んで右側の時計が制限時間ってことか。もうあんま時間ないやん。

「…時間ないやん」

思ったことを口に出すと、うっさい、と速攻で返事が返ってきた。
その姿はゲームに熱中している子供と大差ない。

そうこうしている間にカウントダウンが始まって。
あともうちょっとのところで時間切れになった。

「くっそー!!」
「………」

…うわ、めっちゃムキになってる…

画面はモノがごちゃごちゃしていた風景からいきなりでかいキャラクターに変わって。
…あぁ、これが王様ってやつか。…めっちゃこきおろされてんやん…
なかなか理不尽なことを言うてるキャラクターやな…

「めっちゃ腹立つ!!」

案の定、薫くんはご立腹。
俺は負けん、と果敢にも再チャレンジ。

…子供や、ホンマに子供や…

そんな様子を銜え煙草のまま、後ろから眺める。
普段あんまりこうやって見ることがないから、何か新鮮で。
いい年こいた子供が何かに熱中してるのを邪魔したら半端なくぶち切れられるけど、こうしてる分には文句はないらしい。



再チャレンジした薫くんは、無事に規定の大きさの塊をつくってご満悦。
へぇ、塊が星になんねや…
無言の空間で、静かにゲームのBGMだけが響く。

その後も薫くんは新しいステージで塊づくりに熱中しとって。
俺はといえばすることもなくてソファに身を預けたまま、その様子をぼーっと眺めてる。

外は気持ちいいくらいの快晴。
部屋の中は暑くもなく寒くもなく適度に満たされていて。
目の前にはゲームに熱中している恋人の姿。
そんな何でもない日常的な風景がやけに心地良くて。和む。



気が付いたらソファでそのままうたた寝しとったらしい。
今何時やろ、と思って身体を起こす、と。
俺のすぐ傍で床にぺたんと座り込み、ソファに上半身を預けた状態で寝息をたてている薫くんの姿が目に入った。

「………」

あどけない表情で眠るその姿は、さっき以上に無防備で。可愛い。
くしゃりと髪に指を通すと、微かに閉じていた目蓋が動いて。
起きるかな、と思ったけど、薫くんはそのまま何事もなかったかのように寝息をたてている。

「風邪ひくで、もぉ」

ソファから降りて。
薫くんの身体をそうっと抱き上げて、胸に凭れかけさせる。
無意識にか、擦り寄ってくる身体。
そういう些細な行動が、やけにくすぐったくて。嬉しい。

無防備に晒された薄く開かれた唇に、そっと口付けを落とす。



分刻みのスケジュールからは、考えられへんくらいゆっくりした時間。
たまにはこんな休日もええな。
俺はそんなことを考えながら、抱き上げた身体をぎゅっと抱きしめた。

 

END

 

明け方4時、のたうち回った上に生まれた妄想の産物
ファンメの薫くんの解答があまりにも可愛くて
誰かにめっちゃ思いの丈を伝えたかったんやけど、
そんな時間に僕のアホな話に付き合って下さる方はおらず…涙
誰かこんなアホなこと考えてる人間と友達になってやって下さい…

ちなみに僕もあのゲーム大好きです
買いました、新作