「―――ッ」
鈍く、白濁した意識が、不意に浮上して目が覚めた。
「…あ、れ…」
まだ覚醒せず、ぼんやりとした状態のまま
とりあえず今の状況を把握しようとする。
「あ、起きた?」
緩く、瞼を瞬かせる俺に、上から唐突に振ってくる声。
その声を辿るように視線を滑らせれば、そこにはダイの姿があって。
「ダイ…」
強烈に感じる喉の乾きで、掠れた声のままとりあえず名前を口にする。
そのまま、今の体勢を確認しようとした、瞬間。
「っ、へ!?」
思いもよらん状況に、俺は思わず素っ頓狂な声を上げた。
Private Lesson
-How to date?-
6thdate
「ちょ、え、何…!?」
あまりのことにテンパった俺は、あわあわと焦って身を起こそうとする、が。
「か、薫くん、危ないって!」
その瞬間、ベッドサイドまで追いつめられていたらしく、間一髪で
ダイの手に抱き留められた。
いや、え?
抱き留められ―――
「はぁぁぁっ!?」
「うわ、ちょっ、暴れんといてよ!」
思わずダイの腕の中でじたばたともがけば、そう言って逆に強く抱きすくめられてしまう。
ぴたりと動きを止めた瞬間、視線が絡み合って。
「……」
何を言えばええのか、全く思いつかずにしばし見つめ合うこと数十秒。
相変わらず男前なその顔が、自分のすぐ目の前に迫って。
酒が入ったせいか、微かに赤みの差した頬。
肌理の細かい、白い肌。
何より、その、瞳が。
いつもと違う、『何か』を溶かし込んで。
一体これは、何のシグナル、やったっけ―――?
それに気付く前に、すっと離れていった身体。
ダイの体温が自分のソレよりも高いことを、少し寒さを感じることによって知った。
「大丈夫?頭とか、痛くない?」
「あ、うん…」
ベッドから降りて、備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出したダイは
グラスを片手にこちらに戻ってきて。
「薫くん、相当飲んでたから。店出るときとか、ほんますごかったで」
控えめに笑いながらグラスに水を注がれ、手渡される。
「すまんかったな……」
急に気恥ずかしくなってきて、俯いて小さく謝った。
情けない話やけど、途中からほとんど意識がない。
自分でも気付かんうちに、今日は相当飲んでいたらしい。
それが睡眠不足の身体と相俟って、余計酒が回ったって
いうところなんやろう。
「…ここは?」
見慣れへん室内に、きょろきょろと視線を彷徨わせながら問いかければ
シティホテル、という簡単な答が返ってきて。
「さっき飯食っとった店の上が、ちょうどホテルやってさ。
さすがに店に泊まるわけにはいかんからなぁ」
「あ、そうなんや…」
てっきりそういう店なんかと勘違いしてたけど、
そうではなかったらしい。
…まぁ、場所が場所だけに当たり前っちゃ当たり前か。
「どうする?先風呂入るか?」
先程から俺が座っているベッドの向かいにあるもうひとつのベッドに
身体を転がしていたダイが、そう言って視線をこちらに投げてきた。
「あー…どないしよ…」
「まだ酒抜けてへんみたいやし、後にするか?」
「そう、やな…」
とりあえずトイレ行ってくる、と身体を起こせば、
ダイがそっち、と入り口近くにあったドアを指さして。
言われるがままにドアを開ければ、やけにだだっ広い洗面所に出くわした。
「…は?」
普通、風呂とトイレって一緒よな、シティホテルって。
ユニットバス、っていうんやっけ。
それから考えれば、あり得ないこの造り。
やけに広い洗面所。
そこには、やけに豪華な造りのドアが2つ。
片方を開ければトイレ。
もう片方を開ければ―――これまた豪勢なバスルームが。
「え、ちょ、ダイ!?」
「ん?」
慌ててトイレから出ていけば、ベッドに横になったまま
テレビを見ていたダイがこちらに視線を寄越して。
「な、何かこのホテルやけに豪華やない…?」
「んー?そうか?」
キョドって冷や汗を垂れながら口を開く俺を余所に、
平然と返ってくる答え。
「ま、まさかお前、また予約、とか…」
「はは、いくら俺でも初デートでベッドインはせんって」
「!」
あからさまな言葉。
思わず息を呑んだ俺に、ダイはからからと笑いながら。
「さっき同じベッドで寝てたんは、薫くんが寝ぼけて俺の服離してくれへんかったからやで。
いくら何でも、寝てるところを襲ったりなんて紳士道に反することはしません」
かなり惜しかったけどなぁ、なんて。
本気か冗談かわからん調子で言い募るダイ。
―――なぁ
お前は、どこまで本気なん?
「―――じゃぁ」
「?」
同じように冗談で笑い飛ばすのを期待していたのか、ダイは静かに口を開いた俺に
きょとんとした表情を見せて。
そのまま視線で続きを促されて、俺はこくりと息を呑んでから
言葉を紡いだ。
「ダイは、俺がええって言ったら―――セックスすんの?」
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