トシヤくんを見てて思ったことがある。
「みゆ、ゆゆ、餌だぞー」
「よく噛んで食えって」
「お、ちゃんとトイレ出来てんじゃん!えらいな〜みゆ!」
…この人は、意外と、結構。
―――面倒見がいい。
ごはんを食べ終えて、お気に入りのおもちゃで遊びだしたみゆたちを
わしわしと撫でているトシヤくん。
いつもツアーなんかで長時間家を空けた後は、みゆもゆゆも俺にべったりやのに、
トシヤくんがいるときは俺の方なんか見向きもせぇへん。
しつこいくらいされる「好き好き」っていうサインのちゅうも、
トシヤくんがいるときはそっちばっかりで、俺には「ついでに」程度。
…結構飼い主傷付いてんの、気付いてる?
構ってもらえるんがうれしいんか、自分からおもちゃをくわえて近寄っているみゆゆ。
相貌を崩して笑いながら、そのおもちゃを取り上げて遠くに投げてるトシヤくん。
その顔、すごいうれしそうなんやけど。…このサド。
他人が来たらとにかく威嚇して吠えて大変やのに、トシヤくんに限っては
すっかり骨抜きにされてる愛犬を見ながら小さくため息を一つ。
…まぁ、それだけこの人がうちに入り浸ってるってことなんかもしれへんけど。
「…トシヤくんってさぁ」
「ん〜?あははっ、やめろってみゆくすぐったい!」
みゆに押し倒されて、べろべろと口元を舐められながら笑うトシヤくん。
やめろ、なんて言いながら一向に押しのける素振りなんか見せずに
その小さな身体を抱き上げて胸に乗せて。
ふんふんと耳元の匂いを嗅いでいるゆゆにくすぐったそうにしながら
みゆを抱いた逆の大きな手でその頭を撫でている。
…うらやましい、なんて。
死んでも言うつもりはないけど。
「……まぁええや」
言いかけていた言葉を飲み込んで、夕食の終わった机の上から
皿を持って立ち上がる。
2枚の薄い皿と、使ったグラスをシンクに置いて。
水を流してスポンジを泡立てながら、さっさと洗い物をしていると。
不意に、背中に感じる熱い体温。
「…トシヤくん、じゃま」
「相変わらずつれないなぁシンヤ」
耳元に落ちる、少し眠たそうな声。
ちゅ、と悪戯に耳の後ろに口付けを落とされて。
「洗い物してんねんて。落としたら割れる」
「邪魔しねぇからさ」
「もうすでにすごい邪魔」
背後から両手を腰に回されて、抱き寄せられた身体。
みゆやゆゆに合うのが久しぶりなら、この体温をこうやって感じるのも
すごい久しぶりなわけで。
相変わらず素直になんかなれんくて、口を開けば天の邪鬼なことばっかり
言ってしまうけど、でも、こうされんのはホントは嫌じゃない。
俺の文句をはいはい、なんていなしながら、そのままの体勢で
じっとしてるトシヤくん。
どうやら、離してくれる気はないらしい。
仕方ナシにそのままの状態で洗い物を再開すると、
しばらく黙っていたトシヤくんが徐に口を開いた。
「さっき何言いかけたの?」
「何が?」
「リビングで。何か言いたそうにしてたじゃん」
「…あぁ」
みゆやゆゆと遊んでいるトシヤくんを見ながら、
本当に不意に思ったこと。
この人は、意外と、結構。
―――面倒見がいい。
“トシヤくんってさぁ…”
案外、いい父親になりそうよな
なんて。
そんなこっぱずかしいことを言おうとしてたなんて、
どうかしてた。
「何でもないよ」
「途中まで言ったんなら最後まで言えよー気になるじゃん!」
「じゃぁ気にしといて」
「うわーマジで?」
それって生殺しじゃん、なんて言いながら
ぐりぐりと頭を押しつけてくるトシヤくん。
…それは一体いくつの子のする嫌がらせやねん。
「ちょ、何してんの」
子供並の嫌がらせをするかと思いきや、徐に服の裾が捲られて
中に入り込んでくる暖かい手。
飢えていたこの感触に、一気に身体の心拍数が上がるのを感じて。
「トシヤくんってば!」
やめさせようと身を捩るが、一向に効果は見られずに。
その手を押し止められればええんやろうけど、生憎俺の両手は泡だらけ。
…この確信犯、絶対わかってやっとる…!
「言うまでやめねぇ」
「何で意地になってんねん!?」
耳元から滑り落ちた口唇が、首筋に落ちて。
ちゅ、と濡れた音を立てて強く吸われるソコ。
「ちょっ、跡付けんとってって!」
「いいじゃん…」
「よぉない…ッ!!」
あのおっさんらにからかわれんのは誰やと思ってんねん!
セクハラまがいのからかいを受けんのは、誰やと…!
「シンヤの後ろ姿がそそんのがワリィ」
「はぁ!?んちょ…!」
やばっ、と思ったときには、つるりと手から洗っていたグラスが滑り落ちて。
ちょうど水を貯めていたボウルの中に落ちたそれは、ぼちゃんと濡れた音を立てて
泡だらけの水の中に沈み込んだ。
「ちょ、言う、言うからヤメ…!」
本格的にここでおっぱじめそうな勢いのトシヤくんに、慌てて言い募る。
くそ、何で俺がこんな目にあわなあかんねん…!
「んー?ナニ?」
「っ、やめ…!」
きゅ、と。
潜り込ませた指先で、摘み上げられた胸の突起。
髪を横に流されて、露わになったうなじに熱い舌を這わされて。
まずい、やばい。どんどんあがる体温に、早まる鼓動。
必死にシンクにつかまって崩れ落ちそうな身体を支えながら、
俺は思わず叫んでいた。
「え、ええ父親になりそうって思っただけや、って!」
しん、と静まりかえった空間。
ぜぇはぁと肩で息をしながら、ぴたりと動きを止めたトシヤくんを不審に思って
ちらりと振り返れば、目を見開いたままこちらを凝視していて。
「…それって、みゆとゆゆのってこと?」
「う、うん」
端から見たら何とも言えず間抜けな格好のままでのやりとり。
2人とも黙りこくったまま、一秒が数分にも感じるような、じれったい時間が流れる。
それを不意に破ったのは、やっぱりトシヤくんの方で。
「……じゃぁさー」
ニィ、と。一瞬で変わった雰囲気。
やばい、と本能が告げるが時既に遅し。
「その場合って、シンヤが母親、ってことだよな?」
「はっ!?母親!?」
思ってもみなかった一言に、思わず固まる俺。
母親!?母親!?俺が!?
あまりのことに呆然となっていた俺をいいことに、
トシヤが腕の中でくるりと俺の体勢を入れかえて。
思いがけず真正面からかち合った視線を慌てて逸らしたけど、
すぐに両頬を固定されて顔をのぞき込まれた。
「なーシンヤ。…子作りしよ?」
「っ!?」
今度こそ訳のわからんことを言ったトシヤくんの言葉を
理解する間もないまま、口唇を塞がれる。
「うん、決定!」
「いや、アホか、おろせバカ…っ」
否定をする時間すら与えられず、その場で肩に担ぎ上げられた。
俺は荷物ちゃう!! おろせマジでこの筋肉バカ!!
じたばたと肩口で暴れたところで、鍛えた体はびくともせず。
リビングに行った途端、4つのつぶらな瞳と目があって
かぁーっと頬に赤みが差した。
「ちょ、みゆもゆゆもおる!」
「お前らはダーメ」
寝室に続くドアを開けようとした途端、入ってこようとした2匹に
トシヤはそう悪戯そうに笑う。
閉めてしまったドアの向こう、甘えた声で鳴く2匹を余所に
意気揚々とベッドに俺を下ろして。
「あいつらも可愛いけど、シンヤが一番可愛い」
「…かわいない」
「可愛い」
「かわいな…」
いつまでも続きそうな言い争いに、もう黙れとばかりに
やわらかく降ってきたキス。
そのまま深く舌を絡め取られて。
………今日くらいは、まぁ。流されてもええか。
そんなことを頭の片隅で思いながら。
俺はゆっくりと、トシヤの首に両手を回した。
END
Shinya , Happy Birthday To You xxx
何となく、シンヤがトシヤを“くん”付けで呼んでたら萌えるなーと思って書いた話
…誕生日とは全く違う話だけれども。汗(2回目)
しかしこのトシヤさん、デリカシーがない。爆