「知っとる?
鳥を飛べんくするにはな、風切り羽っていう羽を抜いてまうだけでええんやって」
蒼く、高い空を見上げていたダイが、そうぽつりと呟いた。
「それだけで飛べんくなるんやって」
人間にはない、羽を持って地上を飛び立つ鳥たちが、逆光の中で空を行き交っている。
「それって人間で言う足のことなんかなぁ」
な、と。
時折ダイは、普段からは想像もつかないような難しいことを口にする。
いつも見せるやわらかい笑顔からは遠くかけ離れた、冷たいぞっとする響きをもった声で。
「トリカゴで鳥を飼うんならさ、風切り羽を抜いてまえばええんよな。
そうすれば、飛ぶことも逃げることも出来んくなるねんから」
ホンマに『俺だけのモノ』になるんよな、と。
ひどく残酷なことを口にしながら、クスリと笑う。
怜悧な笑顔から、目が離せんくなる。
「薫」
おいで、と。
優しい声音で、ダイが両手を広げる。
逃げ場を失った俺は、いつもその腕の中に囚われてしまう。
ダイというトリカゴに、風切り羽を失った俺がいる。
飛べない鳥。
俺と同じ、飛ぶことの出来ない鳥。
END