―――座のアナタ!今日の運勢は………』

 

four-leaf cLOVER

 

*水瓶座のギタリストさん

無くしたと思っていた、お気に入りのリングが見つかった。
どこで無くしたのかも身に覚えがないまま、最近はすっかり諦め気味だったのだが、
今朝ジッポを落として潜り込んだベッドの下にころりと転がっていたのだ。

「ラッキー♪」

鼻歌交じりにそのリングを人差し指に絡め、しげしげと見つめる。
長い間放置していたからか、少しだけシルバーに変色が見られるものの、
おそらく磨けば大丈夫やろう。

無くしたときは値段のこともあったけど、何より気に入ってよく付けてたから
そのときの落ち込みようったらなかった。
限定品だったために同じものを手に入れるのも困難な状況で、泣く泣く諦めたのを
今でもよく覚えてる分、こうして手元に戻ってきてくれたのがひどくうれしい。

「今日はええことありそうやな」

見つかったリングを早速中指に嵌めると(もちろんサイズはピッタリや!)、
俺はそのまま機嫌良く寝室を後にした。

 

*射手座のギタリストさん

目覚めて早々、机に足の小指をぶつけた。

「いっつぅ…」

寝ぼけてベッドサイドに置いていたメガネを落としてしまい、
それを拾うために屈もうとした瞬間、やってしまったのだ。

あまりの痛みに思わずその場に蹲り、足の小指を両手で覆う。
紙で指を切るだとか、そういう些細なことが実は
ものすごく痛いんじゃないか、なんて。
少し腫れて熱を持ったそこを涙目でさすりながら、
しみじみと考えて。

そのまま床に腰を下ろそうと、後ろに体重をかけた、
瞬間。

―――パキッ

「え………」

ちょうど尻の下で、小気味のいい音と共に、何かが割れた感触。
思い当たったあるモノにタラリと冷や汗を流しながら、
恐る恐る腰を浮かしてみれば、そこには。

無惨にも、綺麗にヒビの入った自分のメガネ。
自分の全体重を乗せたそれは、いっそ可哀想なほどに変形していて。

「………さ、最悪や……」

じんじんと痛む足の小指から手を離した俺は、そのまま思わず
ずきずきと頭痛の起こりはじめた自分の頭を抱えた。

 

*水瓶座のギタリストさん

休憩時間に出かけたコンビニのくじ引きで、缶コーヒーが当たった。
煙草を買いに来ただけやったのに、思わぬラッキーに愛想良く礼を言って店を後にする。

あいにく降り出していた雪は雨に変わりつつあったけど、
手にしていた傘の下で俺はご機嫌やった。
中指には今朝見つかったお気に入りの指輪。
カサリと音をたてるビニル袋には、タダでもらった好きな銘柄の
缶コーヒーがゆらゆらと揺れて。

昼下がりの空の下、雨にブーツが濡れるのも気に止めずに
小さな幸せを噛みしめながら歩く。
こういう何気ない幸せが、心を満たしていってくれるものだと気付いたのは、
情けないけれどごく最近なのかもしれない。

「…俺も年取ったってことかなぁ…」

ふわり、と漂うため息にも似た吐息は、周りの空気を白く染めて。
思わず零れた独り言に少し笑って、首元に巻いたマフラーに顔を埋めようとしたその、瞬間。



視界の隅を、見慣れた影が通り過ぎた。

 

*射手座のギタリストさん

―――最悪、最悪、最悪!

朝からついてない出来事のオンパレードに、俺は機嫌が悪くなるのも
通り越してすっかり意気消沈していた。

仕事に出てきたら、今日に限ってギターの弦が切れて。
おかげで指にも怪我を負った。
血の滲んだ指を口にくわえながら、今日は一体何なんだと
涙目になりながら肩を落とす。
気分を落ち着かせようと煙草に手を伸ばせば、
あいにく箱の中は空っぽで。
追い打ちをかけられたような気になって、ますます落ち込んだ。

気分転換に少し散歩でもしてこようと外へ出れば、俺が出かけるのを
見透かしたように大雨が降り出して。

―――何でやねん、さっきまで雪やったやんけ

最早どうしていいかわからず、傘も持ってなかったために
ものの数分で濡れ鼠になった俺は、
この憤りをぶつけるところも見つからず、俯いて宛てもなく彷徨う。

擦れ違う人々が奇異の目でこちらを見てくるのはわかったけれど、
もう―――どうでもいい、と。
投げやりになっていたその、瞬間。



「ダイ?」

あまりに聞き慣れたその声に、思わず足を止めた。

 

 

 

「どないしたん、びしょびしょやん」

傾けられる傘の下、そこにいたのは同じバンドのメンバーであり、恋人である―――薫で。
ダイは髪から滴を垂らしたまま、ぼんやりと近付いてくる薫の姿を目で追っていた。

「はよ入れって。お前傘持ってへんかったん?」
「あ、うん……いや、ええよ、薫くん濡れる…」
「ええから。ほら、こっち来いって」

ぐい、と手を引かれて。
そのままひとつの傘に2人で身を寄せる。

「なんでこないびしょびしょなん」
「いや、雪やったから。散歩しよ、思て外出たらいきなり降り出してん」
「ほんまにか。ついてへんなぁ、お前」

ため息混じりに何気なく言われたその一言に、
また改めてずーんと落ち込むダイ。
先程から様子がおかしいとは思っていたが、それに輪をかけて
肩を落とすダイに薫は思わず首を傾げた。

「どないしたん?」
「ん?いや……今日ほんまにツイてへんくてさ…」

はは、と苦笑混じりにぽつりぽつりと言葉を紡ぐダイは、
なるほどいつもの明るさはなりを潜めて。
寒さのためか、青白くなった顔を横目に見ながら
薫はその手を引いてとりあえずスタジオに戻った。

暖房の利いた部屋にダイを押し込んで、スタッフに頼んで
あるだけタオルを持ってきてもらって。

「ダイ、とりあえず服脱いで。んでこれで拭いて…」

未だ髪から滴を垂らしたままのダイに薫はてきぱきと指示を出して、着替えをさせる。
着るものはジャージぐらいしかなかったが、この際しょうがない。
すっかり悄気てソファに座り込んだままのダイの髪にタオルを被せると、
薫はそのまま黙って濡れた髪を拭った。

「大丈夫か?」
「……あんまり…」
「みたいやなぁ」

ダイの言葉に、薫は苦笑気味にそう呟いて。

髪を拭っていた手を止めると、そのままダイの両頬に手を滑らせた。

「…薫くん?」

まだ体温の戻りきらない頬に感じるぬくもりに、
ダイは薫を見つめたまま目を瞬かせて。

「今日俺な、すっごいついててんよ」
「うん……」

そのまま話を始めた薫の言葉に、ただ耳を傾ける。

「無くしたと思った指輪出てきたし…さっきも煙草買ぉたらタダで缶コーヒーもろたし」
「そう、なんや…」

自分とは逆に今日はついていたらしい薫の言葉に
段々と曇り始めるダイの表情。
それに気付いた薫は、両頬に添えた親指でダイの目元を
優しくなぞりながら、さらに言葉を重ねた。

「うん。やから、さ」

俺のツキ、お前に分けたるわ。

そう、やわらかく呟いて。
薫はそっと、ダイの口唇を掠め取った。

「か、薫くん?」

まさか薫が仕事場でこんなことをするとは思っていなかったダイは、
目を白黒させて薫の顔を見つめている。

「俺のラッキーとお前のアンラッキー。
 足してこれで半分ずつ、な?」

ちゅ、と。口唇が触れ合うギリギリの距離で、囁かれる言葉。
目の前には優しく笑う薫がいて。

「俺のラッキー分けたってんから。もう大丈夫やって」

そのまま、ぽんぽん、と頭を撫でられる。
ダイはぎこちなく少し笑うと、うん、と微かに頷いた。

「ほな、もうちょっとだけ、分けてよ」

少しずつ体温の戻り始めた両手を、薫の両頬に添える。
悪戯っぽく微笑んだ薫は、もうちょっとだけやぞ、なんて
小さく囁いて。

そのまま、寄せられた体温に目を閉じた。






うれしいことも、楽しいことも、悲しいことも、やるせないことも。
こうしてふたりで、分かち合っていこう。

きっと君とならば、どんな困難だって乗り越えられる気がするから。

「薫、ありがとう」

幾度交わしたかわからないキスの合間に、有りっ丈の想いを紡ぐ。
それに応えるようにして微笑む薫。

甘く、ぱぁっと華が開いたようなその笑顔に、
ダイは改めて自分の幸運を噛みしめた。



きっと自分のラッキーパーソンは、

いつでも、どんなときでも

他の誰でもない、この恋人なんやろう

 

END

 

キリ番4444を踏んで下さった織薫サマにお捧げします。
長らくお待たせしてしまって本当にスイマセン。
ツイてないダイくんと、逆にツイてる薫くんの1日、ということで…
ど、どうでしょう? ちゃんとリクに添えてるでしょうか?
発想が貧弱でスイマセン!汗
(一生懸命ツイてることとツイてないこと考えたんですが。汗汗)
少しでも楽しんでいただければ幸いです
ご報告&リクエスト、どうもありがとうございましたv

>>織薫サマ
リクエストと同時に暖かいコメント、どうもありがとうございました!
以前から遊びに来てくださってたとのことで…
更新も滞りがちだったにも関わらず、本当にありがとうございます。
その上時折拍手でコメントまで下さってたんですね!
ありがとうございます、ホントにうれしいです!!
夫婦お好きなんですねー。私も大好きですvv
さて、今回のキリリクですが、お言葉に甘えさせていただいて、
ずいぶんと長くお待たせしてしまいました。
本当にすみません。汗。
少しでも楽しんでいただけるといいのですが...
これからも頑張っていきますので、よろしければまた遊びに来てやって下さい。
リクエスト、本当にどうもありがとうございました!